今回は、琉球大学2年生、松野莉子さんが、「マルサク佐藤製材」に伺いました。

自己紹介

はじめまして。今回取材をさせていただきました、大学2年生の松野莉子です。現在、琉球大学で教育について学んでいます。生まれてから高校卒業まで、18年間日田にいました。「こんなど田舎でてやる!」「もっと違う世界がみたい!」という勢いに任せ、沖縄で大学生活を送っています。山に囲まれて育ってきたけど、林業なんて興味も関心もない!そんな私が感じた林業の温もりを言葉でお届けします。

 

歴史と歩んできた製造業

現代から遡ること500年前の江戸時代から日田の林業の歴史が紡がれている。日田市は九州のちょうど真ん中に位置し、流通の便もよかったという。盆地ならではの夏は暑く冬は寒いという環境を活かした日田の林業。そんな日田で木材を加工しているマルサク佐藤製材所を訪問し、そこで働く佐藤栄輔さんにお話をお伺いした。

一言に林業といっても、森の環境を守る仕事もあれば伐採した木材を加工して売る仕事もある。現代では、森の環境について関心のある若者は多いものの、製材業は新人の育成プログラムなどもなく、後継者や新たに製造業をしようとする若者は少ない。大規模な製材会社なども増え、大量生産が可能になっていく中、地域に根ざし、山や人にとってどんな形でここにしかない価値を生み出していけばいいのか、佐藤さんは日々考えているとのこと。こんなに木に囲まれた地元のことなのに、林業のことを考える人は少ない。林業?製材所?なにそれ、みたいな若い子達にも木の持つ魅力を少しでも知ってほしいと思う。

佐藤さんが生み出す価値

どこでもある程度変わらない価格とクオリティーで木材を作り出すことができるようになった今、業界全体が停滞しているような状況らしい。新しい風がなかなか吹きづらい状況で、佐藤さんは企業のみではなく本当に木が欲しい個人の方にも、届けようとしている。製材所の2階では、一般の方向けに「スギ工作クラブ」という日田の杉を生かして自分の手でモノを作る楽しさを味わってもらう活動をしたり、お客様の求めるものに合わせて加工して販売したりしている。どこでも木材が手に入る中で、「マルサク佐藤製材所で買ってもらうことでホームセンターでは得ることのできない価値や気持ちを感じてもらいたい」と仰っていた。

 

木を見て時間を感じる

佐藤さんのお話の中で一番印象に残ったところがこの話。

100年もの歴史がある丸太にもなると、とっても大きく加工にも手間がかかるそう。昔は木材としての需要があったものの、現代は作業の簡略化のためにも大きい丸太はあまり使われなくなっているし、これからも大きい丸太を使うことは減っていくという。自分たちが知らない100年を生きてきた木。そんな木と一緒に私たちの暮らしを育むことができるようになれば、せわしくすぎる時間を忘れることができたらとっても素敵だと感じた。家の材料も家具の材料も大量生産ができるようになってしまった今だからこそ、機能性よりも時間と過ごす価値のようなものを知ってもらいたいし、そんな唯一無二のもの付加価値のあるものを生み出したいという思いが佐藤さんにはある。

取材を終えて

私は、普通に暮らしている中で林業と自分との関係なんて考えたことなんてないし、興味もないって思っている人が多いと思う。私も正直そうだし、今まで林業のことについて考えるきっかけすらなかった。考えてみれば、自然を守るためにどうしたらいいのか考えることはあったけど、こんなに木のお家や木の家具・おもちゃが溢れているのに、木が自分たちの暮らしとどう関わっているのか考えないのが不思議。お話を聞くと佐藤さんは本当の木の価値について考えている方だと感じた。​​​​​​​​私たちの知らない時間を生きてきた木。そんな木を使ったモノを暮らしに取り入れることで時代を遡る感覚を味わうことができたら素敵だと思った。何年も前に芽生えた木が私たちの暮らしのなかにあるって、自然のタイムカプセルみたいななんとも言えない気持ちを味あわせてくれると思う。

今回お話を伺った佐藤製材所は、自分のお気に入りの木の物語を見つけるお手伝いをしてくれるような場所であると感じた。